女性の活躍推進法ですべての女性は輝けるか

柚木康子(均等待遇アクション21事務局)

安倍首相は国連総会の一般演説で女性の労働機会、活動の場の充実は今や焦眉の課題と語るなど、海外で女性活用をさかんに謳っている。2014624日閣議決定された「日本再興戦略改定2014」では「担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革」を掲げ、女性の更なる活躍促進として「学童保育の拡充」と「女性就労に中立的な税・社会保障制度の実現」を、働き方改革では「働き過ぎ防止のための取組強化」、「時間ではなく成果で評価される制度の改革」、「多様な正社員の普及・拡大」を、そして外国人材の活用で「特区での外国人家事支援人の受け入れ」などを掲げた。

 8月7日女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築に向け、労働政策審議会雇用均等分科会が始まり、たった5回の審議で9月末に建議(民間部門)となり、10月7日法案要綱を諮問・答申した。これらの動きに対し、男女平等な職場の実現を求めてきた女性たちは、政府はいったい何をしようというのかと活動を開始し、呼びかけ人方式で910日には院内勉強会「『女性の活躍推進に向けたあらたな法的枠組みの構築』って何?」を衆議院第一議員会館で開催、929日には院内集会「これでいいの?『女性活躍法』」を、1031日には院内勉強会「女性の活躍法を真のポジティブ・アクション法に!」開催した。多くの女性たちが一体どうなるのかを関心を持って参加してくれた。

私は今回の雇用均等分科会を2回目から傍聴してきたが、厚労省の姿勢は201210月の均等法見直し時とは全く違っていた。日本は国連女性差別撤廃委員会による総括所見やILOから差別の定義の明確化や男女賃金格差の是正を強く求められており、均等法改正は是正のチャンスであったが、経営側も厚労省にもやる気のカケラも見られなかった。今回は様変わりであった。労働側委員も非正規も含めたすべての女性を対象に、長時間労働をなくすことが必要、賃金是正も必要と頑張り、建議には大部反映された。そして1017日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」が閣議決定され、同日国会に提出された。

女性の活躍推進法は、官民の事業主に「女性の職業生活における活躍」にむけた行動計画策定を義務づけるポジティブ・アクション法だ。ポジティブ・アクションとは「社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置(内閣府男女共同参画局HP)」だ。

法案を見てみよう。まず目的(1条)には「この法律は、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応していくためには、自らの意思によって職業生活を営み、または営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することが一層重要になっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり・・」(下線は加筆)と書かれている。男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとりとはあるものの、女性の活躍推進が、少子化のため、社会経済情勢の変化に対応するためであり、決して「女性の人権」のためではないことが露骨だ。

基本原則(2条)には1項に「女性の職業生活における活躍の推進は、自らの意思によって職業生活を営み、または営もうとする女性に対する採用、教育訓練、昇進その他の職業生活に関する機会の積極的な提供及びその活用を通じて、その個性と能力が十分に発揮できるようにすることを旨として、行わなければならない」とある。1条と21項にある「女性」には6割にも及ぶ非正規で働く女性はもちろん雇用形態や年齢、婚姻の有無など家族関係を問わず、すべての女性を対象とすることを明確にする必要がある。

22項には「女性の職業生活における活躍推進は、(中略)家族を構成する男女が、相互の協力の下に、育児、介護その他の家庭生活における活動について家族の一員としての役割を果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境を整備することにより職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行わなければならない」とある。家族を構成する男女というが、シングルマザーを始め、家族の構成は多様であり、この表現は修正されるべきだ。さらに職業生活と家庭生活との両立のためには、男性の長時間労働の是正が必須だ。

8条では一般事業主に対する行動計画の策定について規定している。1項では301人以上を常時雇用する事業主は今後定める「事業主行動計画策定指針」にもとづいて一般事業主行動計画を定め、厚労大臣への届出が求められる。2項では行動計画には①計画期間、②取組の推進により達成しようとする目標、③取組の内容及びその実施時期を定める。3項では行動計画を定めたり変更する時には、①採用者に占める女性労働者の割合、②男女の継続勤続年数の差異、③管理的地位にある労働者に占める女性割合その他の状況を把握し、改善すべき事情について分析したうえで行うこと、目標は数値を用いて定量的に定めること、行動計画は労働者に周知することを求めている。300人以下の企業も努力義務となった。3項に関し、建議には③としてあった「労働時間の状況」がなくなった。1031日の院内勉強会で厚労省の担当者は、質問に対し労働時間は「その他の状況」に含まれると答えたが、それなら明記すべきだろう。その他把握すべき事項には、男女の考課結果の分布状況、賃金格差の状況、昇進の状況なども必要だ。もう1点、官である特定事業主には毎年1回取組の実施状況の公表の義務付けと目標達成の努力が求められている(1567項)のに一般事業主にはないことも法の実効性に疑問符がつく。

「すべての女性が輝く」と言いながら、新法には6割が非正規の女性の賃金・労働条件の向上につながる施策、長時間労働の是正は見えない。派遣法大改悪や成果による時間管理=残業代ゼロ・過労死促進は「女性の活躍推進」には真逆のものだ。結局安倍政権の女性活躍は、一握りの女性たちを意思決定の場に参加させ、長時間労働の男性と競争を迫り、残りは今まで通り安く働けとなりかねない。今必要なのは異常な長時間労働をなくすこと、女性の労働を正当に評価し賃金を上げることだ。